ミュージカル「シャーロックホームズ2 ブラッディ・ゲーム」
どうしても観に行きたくて、仕事が休めるかも分からないままギリギリでチケットを買った、ミュージカル「シャーロックホームズ2 ブラッディ・ゲーム」。
どうしても行きたかったと言うわりにほとんど予備知識もなく、どういうお話かも知らずに新幹線で兵庫まで行ってきた。
まあ、シャーロックホームズとタイトルにあるんだから推理物だろうと……あとは元々韓国で上演されたミュージカルということは知っていたけど、ホントにそんなレベル。
「ブラッディ・ゲーム」が何を指すのかさえ分かっていなかった。
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舞台の冒頭、秋元才加ちゃん演じるマリアが歌う。
その歌声の美しさに最初から引き込まれた。
秋元才加ちゃんが出演しているのは知っていたけど、クールでマニッシュなイメージだったので、白いドレスを着て可憐に歌うマリアが秋元才加ちゃんだと最初は気付かなかった。
そしてエドガーが現れる。
エドガーは小西遼生さんと良知真次さんのWキャストだけど、私の観に行った回は小西遼生さんの回。そもそも彼が目的で行ったので。
マリアとエドガーの冒頭シーンが終わると場面は変わり、 ワトソン役の一路真輝さんが「ある事件」について概要を説明する。歌で。ミュージカルだから当たり前なのだけど、結構な情報量を歌で説明するのにはちょっとびっくりした。
「ある事件」とはロンドンで起きた、切り裂きジャックのこと。
私は「ブラッディ・ゲーム」というサブタイトルが切り裂きジャックの事件を指しているのだとこの時点ではじめて知った。
ホームズはこの事件の捜査に関わっていた。
主役であるシャーロック・ホームズ役は橋本さとしさん。
シリーズ1作目から一路真輝さんと出演されている。
ホームズ、ワトソン、レストレード警部の捜査によって一度は犯人が逮捕されるも、また凄惨な事件は起こり、別所哲也さん演じるエリート警部、クライブとの捜査がはじまる。
捜査から見えてくる「切り裂きジャック」の生い立ち、悲しい過去、エドガーの切ないくらいのマリアへの愛、マリアの純潔さ、新たな事件を防げなかったホームズの苦悩。
さまざまな切なさが胸を刺し、幾度も涙が溢れた。
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細かいネタバレには触れないことにして、私の観劇の目的だった小西遼生さん演じるエドガーの話。
唯一の支えであり、唯一の守りたいものであるマリアへの愛は痛々しいほどだった。
以前、舞台版「ガラスの仮面」を観たが、小西遼生さん演じる「紫のバラの人・速水真澄」もまたマヤを密かに想い、見守り、影で支えていた。
なかなかマヤ本人に気持ちを伝えられない状況はとても切ないものだったが、エドガーのマリアに対する愛はもっと「血を流すような愛」だ。
エドガーはすがるように彼女を愛し、何を失ってでも守ろうとしていた。
マリアもまたエドガーを愛しているにも関わらず、どこか叶わぬ恋をしているようにも私には見えた。
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今回の舞台はミュージカルなので全編にわたってたくさんの歌のシーンがある。
秋元才加ちゃんの天使のような美しい歌声、小西遼生さんの包み込むような優しい歌声、全員で歌う迫力、どれも本当に素晴らしかった。
一路真輝さんは一人で歌うシーンが多かったと思うが、彼女の歌う姿を見ていて宝塚にハマる人たちの気持ちが分かった気がした。
橋本さとしさんもそうだ。
舞台出身だからか、マイクを付けているとは言えその迫力に圧倒される。
ただ声量があるだけじゃなく、ただ歌がうまいという域も超えた、魅せるパワー。
言葉の聴きとりやすさも必要だろうし、表現力もいる。
簡単に言えば「オーラ」ということなのだろうが、観客すべての心をつかむ魅力があった。
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舞台後、アフタートーク。
今回私がこの日を選んだ理由はそれもある。
登壇者は、橋本さとしさん、一路真輝さん、小西遼生さん、良知真次さん。
Wキャストでお休みだった良知くんは「今日は出演させてもらえなかった良知真次です」と自己紹介。
まりゑちゃんが「天然」と紹介したとおり、一路さんはなぜかホームズのことを「チャップリン」と言ったりして場内爆笑。
さとしさんは「違うw」と言いながらチャップリンの歩き方を真似ていた。
「役として」ではなく個人として誰が好きなのか、という質問には一路さん→「ホームズ」、遼生くんと良知くんは「マリア」と即答。
それからなぜか、別所哲也さんのマネージャー「ツボイちゃん」の話題になり、ツボイちゃんが舞台に一瞬引っ張り出されたり、別所さんのムーンウォークの話題になったときは、着替えてすっかりリラックスモード(差し入れを食べていた)になっていた別所さんがサンダル履きで登場してムーンウォークをしたり。
エミリー院長こと春風ひとみさんに前夜コンビニで目撃された「美青年」遼生くん、「何を買っていたの?」という質問に「なんだっけ……」としばらく考え込んだ後、「缶チューハイ。……あと洗顔料」
この日の舞台で1発で鳴らなかった拳銃を、一路さんがムキになってカチカチやった話になり、一路さんのすぐ近くに立っていたテイラー・バトラー役の竹下宏太郎さんが「この人絶対諦めないんだろうなぁと思った」「お客さんには見えない向きで一路さんがニヤッと笑っていた」とボヤいていた。
レストレード役のコングさんはさとしさんの振ったムチが目に当たったと言っていた。
印象的だったのはムーンウォークをするために登場された別所さんが舞台からはけるとき、遼生くんが立ち上がって深々と頭を下げていたこと。
見ていた私は「鋼牙ぁ……!」と思ったのだけど、鋼牙って誰?、という話はまたいずれ。
【観劇日】2015年5月22日(金)13:00開演
【場所】兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【座席】1階S列